「入れ歯の手入れに歯磨き粉を使っても良いのだろうか?」という疑問を持っている方は多くいます。 結論から言うと、入れ歯への歯磨き粉の使用は絶対に避けるべきです。
歯磨き粉に含まれる研磨剤が、プラスチック製の入れ歯の表面に細かい傷をつけてしまい、そこに細菌が繁殖しやすくなるためです。 入れ歯を清潔に長持ちさせるには、以下のステップが重要です。
- 手順①食後はまず水で食べカスを洗い流す
- 手順②入れ歯専用ブラシと専用洗浄剤で優しく洗浄する
- 手順③就寝時は水や洗浄液に浸けて乾燥を防ぐ
本記事では、入れ歯に歯磨き粉を使ってはいけない理由や、正しい手入れ手順、
入れ歯洗浄剤を使うメリット、選び方を詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

入れ歯に歯磨き粉を使ってはいけない3つの理由

大切な入れ歯の手入れに、普段使っている歯磨き粉は使用しないでください。主な理由を3つ紹介します。
理由①研磨剤が入れ歯を傷つける
普段使う歯磨き粉の多くには、歯の着色汚れ(ステイン)や歯垢(プラーク)を効率的に落とすために、研磨剤が含まれています。この研磨剤は、入れ歯の表面に無数の細かい傷を作ってしまいます。
最初は目に見えないほどの小さな傷でも、毎日の歯磨きで蓄積されていくため、注意しなければなりません。
理由②傷に細菌が繁殖しやすくなる
入れ歯についた細かい傷は、細菌の隠れ家となります。食べカスや細菌が傷に入り込み、プラーク(歯垢)が形成されやすくなるのです。
プラークは口臭の原因となるほか、カンジダ菌などの真菌(カビ)が繁殖する温床にもなりえます。さらに、細菌が繁殖した入れ歯を装着し続けると、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクを高めると知られています。
誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物と一緒に細菌が気管に入り込むために起こる肺炎です。特に高齢者にとっては、命に関わる可能性もある病気として注意が必要です。
参考:歯の健康|厚生労働省
関連記事:入れ歯における臭いの原因は5つ|いやな臭いを防ぐ対処法やよくある質問もご紹介します! – 歯科技工所|株式会社シケン コラム
理由③入れ歯の変形や変色を招く
歯磨き粉の研磨剤による傷は、入れ歯の見た目にも深刻な影響を与えます。表面にできた無数の傷は光沢を失わせ、お茶やコーヒーなどの色素が沈着しやすくなるのです。
これが、入れ歯が黄ばんだり黒ずんだりする原因です。せっかく作った入れ歯が、不潔な印象を与えてしまいかねません。
さらに、研磨剤によるダメージの蓄積は、入れ歯の素材であるプラスチック(レジン)自体を劣化させます。材質がもろくなると、変形やひび割れ、破損のリスクが高まります。
結果として、大切な入れ歯の寿命を縮めてしまうことになるでしょう。

入れ歯を傷つけず清潔に保つ3つの正しい手入れの手順

入れ歯に歯磨き粉を使わずに清潔を保つには、正しい手順の手入れが不可欠です。大切な入れ歯を長持ちさせ、お口の健康を守る3つのステップを紹介します。
手順①食後はまず水で食べカスを洗い流す
食事を終えたら、まず入れ歯を外して水で洗い流しましょう。流水下で、入れ歯の表面についた大きな食べカスやヌメリを優しく洗い落とします。
この時、熱いお湯を使うと入れ歯が変形する原因になるため、必ず水かぬるま湯を使用してください。 洗面所などで洗う際は、万が一落としてしまっても破損しないよう、水を張った洗面器の上で洗うと安心です。
手順②入れ歯専用ブラシと専用洗浄剤で優しく洗浄する
水洗いだけでは、細菌の膜(バイオフィルム)や頑固な汚れは落ちません。入れ歯専用のブラシと、入れ歯専用の洗浄剤(磨き剤タイプや泡タイプなど)を使って丁寧に磨きます。
入れ歯専用ブラシは、普通の歯ブラシよりも毛先が硬く、入れ歯の複雑な形に合わせた形状になっています。 バネの部分や歯と歯茎の境目など、汚れが溜まりやすい部分も意識して、力を入れすぎずに優しく磨きましょう。
この時も、研磨剤入りの歯磨き粉は絶対に使用しないでください。
手順③就寝時は水や洗浄液に浸けて乾燥を防ぐ
入れ歯は乾燥に非常に弱く、空気にさらしておくと変形やひび割れの原因となります。就寝時など、入れ歯を外している間は必ず水や入れ歯洗浄剤の溶液に浸けて保管しましょう。
浸け置きが、洗浄剤による除菌や漂白の時間にもなります。 ただし、金属のバネなどを使用している部分入れ歯の場合、洗浄剤の種類によっては金属を腐食させる可能性があります。
注意書きを必ず確認しましょう。
関連記事:【歯科技工のプロが教える】はずした入れ歯の正しい保存方法は?手入れで注意すべきポイントもご紹介! – 歯科技工所|株式会社シケン コラム

入れ歯洗浄剤を使う3つのメリット

入れ歯の手入れには、専用の洗浄剤の使用を推奨します。入れ歯洗浄剤のメリットを3つお伝えしましょう。
メリット①除菌効果で細菌の繁殖を抑える
入れ歯洗浄剤は、目には見えない細菌やカビ菌(カンジダ菌など)を強力に除去し、入れ歯を清潔に保ちます。細菌の繁殖を抑え、不快な口臭を予防する効果もあるのです。
定期的な洗浄剤の使用は入れ歯が原因となる口内炎や、誤嚥性肺炎のリスクを低減させます。
メリット②漂白・消臭効果で着色汚れやニオイを防ぐ
入れ歯洗浄剤の多くには酵素や漂白成分が含まれており、酵素はヌメリや食べカスといったタンパク質汚れを分解します。一方、漂白成分はコーヒーやお茶、タバコのヤニなどの頑固な着色汚れ(ステイン)を化学的に分解して落とす働きをします。
二つの成分によって、入れ歯本来の色合いを維持できるのです。また、ニオイの原因菌を直接除去する洗浄剤は、優れた消臭効果を発揮します。
入れ歯洗浄剤に含まれている成分によって不快なニオイを防ぎ、清潔な状態を保ちやすくなるでしょう。
メリット③研磨剤不使用で入れ歯を傷つけない
入れ歯洗浄剤は、歯磨き粉とは異なり、研磨剤を一切含んでいません。歯磨き粉の研磨剤は、汚れを削り落とす際に柔らかい入れ歯の表面に無数の傷をつけてしまいます。
入れ歯洗浄剤は物理的な力ではなく、酵素や漂白成分などの化学的な力で汚れを浮かせて分解します。そのため、ゴシゴシと擦らなくても、入れ歯の隅々まできれいに洗浄できるのです。
表面を傷つけないため、細菌が入り込む隙間を作らず、光沢も保たれます。大切な入れ歯を長持ちさせるため、研磨剤不使用の専用洗浄剤が不可欠です。

入れ歯洗浄剤の3つの選び方

一口に入れ歯洗浄剤といっても、さまざまな種類があります。入れ歯の状態やライフスタイルに合ったものを選ぶヒントを3つお伝えします。
選び方①よごれの種類で選ぶ(タンパク質か着色か)
食事後のヌメリや食べカスなどのタンパク質汚れが主な場合は「酵素系」の洗浄剤が適しています。お茶やコーヒー、タバコのヤニといった頑固な着色汚れ(ステイン)が気になる場合は「漂白系(酸素系)」の洗浄剤が効果的です。
入れ歯の汚れや状態に合わせて洗浄剤を選ぶのが大切です。もちろん、両方の成分を含む製品もあるため、パッケージを確認してみましょう。
選び方②入れ歯の素材で選ぶ(金属使用の有無)
部分入れ歯などで、金属のバネ(クラスプ)を使用していると、特に注意が必要です。洗浄剤の種類によっては、漂白成分が強すぎる場合があります。
強すぎる洗浄剤は、金属を変色させたり、腐食させて劣化の原因になったりする恐れがあるのです。入れ歯を長持ちさせるためにも、パッケージをよく確認し「金属床・金属バネ対応」と明記されている洗浄剤や、中性の製品を選ぶようにしましょう。
選び方③洗浄時間やタイプで選ぶ(浸け置きか泡か)
洗浄剤には、洗浄時間や使い方によってさまざまなタイプがあります。主に以下のとおりです。
- 錠剤タイプ
一般的なもので、水やぬるま湯に入れて浸け置くタイプ。数分で洗浄が終わるものから、一晩しっかり浸けて除菌するものまである
- 泡タイプ
すぐに手入れを済ませたい場合に適している。ポンプを押して泡を出し、入れ歯専用ブラシで直接磨き洗いをする
- ジェルタイプ(磨き剤)
研磨剤を含まないジェル状の歯磨き剤。入れ歯専用ブラシに適量を取り、泡タイプと同様に直接磨き洗いする際に使用する
それぞれのタイプにメリットがあります。生活リズムや使いやすさを考えて、続けやすいものを選んでください。
関連記事:入れ歯(義歯)洗浄剤の正しい使い方は5ステップ|注意すべきポイントやよくある質問もご紹介! – 歯科技工所|株式会社シケン コラム

オーラルケア商品の購入に「お口のお店 Oral Care Shop」がおすすめな理由

「お口のお店Oral Care Shop」は、歯科技工所が運営するオーラルケア商品専門店です。お口の悩みを抱える多くの方にとって理想的な選択肢といえます。歯科医師が認めた選りすぐりの商品のみを取り扱っているため、安心して商品を選べます。
当ショップの特徴は、歯科技工士の視点から厳選された商品ラインナップです。歯科技工士は、歯科医療の現場で歯や口腔内の構造について熟知している専門家です。
そのため、お客様のお口の状態や悩みに最適な商品選びをサポートできます。 取り扱い商品は多岐にわたり、歯ブラシやデンタルリンス、替えブラシなど、毎日のオーラルケアに必要なアイテムを取り揃えています。
さらに、入れ歯洗浄剤やマウスピース洗浄剤など、特別なケアのための商品も充実しており、さまざまなニーズに対応可能です。 いずれの商品も、歯科技工士が自信を持っておすすめする商品です。ぜひ、お口の健康維持にお役立てください。⇒お口のお店Oral Care Shopはこちら

入れ歯の歯磨き粉洗浄についてよくある3つの質問

入れ歯の歯磨き粉洗浄についてよくある質問を3つ紹介します。それぞれ詳しく見ていきましょう
質問①研磨剤不使用の歯磨き粉なら使ってもよいですか?
「研磨剤不使用」や「低研磨性」をうたった歯磨き粉もありますが、入れ歯への使用はおすすめできません。なぜなら、 歯磨き粉には研磨剤以外にも、発泡剤や香味剤など、入れ歯の素材に影響を与える可能性のある成分が含まれているためです。
入れ歯には、必ず「入れ歯専用」と記載された洗浄剤や磨き剤を使用してください。
質問②入れ歯を磨く専用の歯磨き粉はありますか?
「入れ歯専用」の磨き剤(ジェルタイプや泡タイプ)が存在します。これらは歯磨き粉とは異なり、研磨剤を含まず、入れ歯を傷つけないように作られています。
入れ歯専用剤を使用する場合でも、力を入れすぎず専用ブラシで優しく磨くのが大切です。 洗浄剤との併用で、より高い洗浄・除菌効果が期待できるでしょう。
質問③入れ歯洗浄剤は毎日使う必要がありますか?
入れ歯洗浄剤は毎日使用してください。 細菌は日々増殖します。
水洗いだけでは、翌日までに再び細菌の温床となってしまいます。 毎日の洗浄剤使用を習慣化すると、入れ歯を清潔に保ち、口臭や感染症のリスクを最小限に抑えられるでしょう。

入れ歯には専用ケア!歯磨き粉をやめて快適な口腔環境を保とう

入れ歯の手入れに歯磨き粉がNGな理由と、正しいケア方法について解説しました。 歯磨き粉の研磨剤は入れ歯を傷つけ、細菌繁殖の温床を作る原因となります。
大切な入れ歯を長持ちさせ、お口の健康を守るには、専用の洗浄剤を使った正しいケアが不可欠です。以下の選び方を参考に、自分に合った入れ歯洗浄剤を購入しましょう。
- 選び方①よごれの種類で選ぶ
- 選び方②入れ歯の素材で選ぶ
- 選び方③洗浄時間やタイプで選ぶ
正しい手入れを継続して、入れ歯の不快なニオイや汚れを防ぎ、食事や会話を心から楽しめる快適な毎日を送りましょう。 なお「お口のお店 Oral Care Shop」では、お口の悩みを持つすべての人のために、歯ブラシや入れ歯洗浄剤など、歯科医師に認められたオーラルケア商品を販売しています。
いずれの商品も、歯科技工士が自信を持っておすすめする商品です。ぜひ、お口の健康維持にお役立てください。⇒お口のお店Oral Care Shopはこちら

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